ヒトは2本足で立ち、直立して姿勢を保って静止しているようでも、実は、体は微妙に揺れ続けています。
頭は5kgの重さで背骨の一番上に乗っていて、身体が動くときには一番揺れる部分です。
これは人間固有の揺れ(固有スウィング)と呼ばれるもので、その揺れの制御するのが上下の顎の骨(とくに下顎骨)であり、またその支点の役割を担っているのが歯なのです。
つまり、頭部や体が揺れて倒れないようにバランスをとって支えているバランサーが、そうは見えないけれども実は下顎であって、さらにその支点が歯であるということ。
それにより「体の姿勢やバランス」=「直立姿勢」と口腔内の状態には、密接な関係があるという学識が導き出されています。
その証しに、高齢になっても口腔状態に問題がなく、直立姿勢がきちんと保てる人は、健康寿命にもよい結果が現れています。
そのことから、高齢化時代の歯科治療において「ヒト直立の観点」が必要とされています。
それが「直立歯科医学」という考え方なのです。
まだ探究途上の学問ではありますが、当院では院長がこの歯科医学を学び、患者さまの症状に応用して治療に役立てています。
「直立歯科医学」によれば、まっすぐ立ったときに口腔内でどこかの歯がかすかに引っかかったり、ぶつかったり、あるいは歯のない状態だと、人間本来の揺れに支障をきたします。
そして、その些細な不具合が全身のバランスに悪影響を及ぼす震源地となりかねません。
つまり、患者さま本人の自覚なしに、歯、あるいは歯の治療が体の不調を引き起こしていたという現象が起きるのです。
歯の「形態」「高さ」「位置」を調整することで、顎の位置も変化します。
正しい位置に顎がくることで、原因不明だった全身の緒症状が改善された例は数多くあります。
来院する患者さまの状態を診察すると、多くのケースで口腔内だけでなく、そのほかの不調や不具合の発見につながります。
長年当院に通い続け、院長の治療方針やこの治療法を理解している患者さまの中には、「腰が痛くなったから咬み合わせを診て」と、来院される方もいらっしゃいます。
実際、診察して治療をすれば、腰痛は軽減する場合もあります。
ほかにも、全身のさまざまな部位の痛みから、謎の体調不良や不定愁訴のような医科では原因不明と片付けられてしまうような疾患まで、多種多様な症例について「直立歯科医学」で口腔内との関係を明らかにすると、解決する場合があります。